5月12日(木) 古峯
午後から雨予報ではありましたが、天城峠から尾根道を行けるところまで行って雨の降り出す前に帰ろうと出かけて来ました。
久しぶりの天城峠、大ブナも健在です。 いつ見てもどっしり美しい。
天城峠からほどなく尾根に登ります。
ブナやモミの木立が続く素晴らしく気持ちの良い尾根です。
こんな天気にもかかわらず、木立の間からうっすら富士山。
キノコ発見。
根元にツボを持つテングタケの仲間と思われますが、何でしょう。
今年もそろそろキノコの季節が到来しますね。この尾根には大きなモミの木がたくさんありますので、アカモミダケが出るのではないかと話しつつ、秋が楽しみになってきました。
だんだんと雨が近くなってきて靄が降りてきました。 一段と幻想的なブナの森です。
古峠から古峯にかけては見事なマメザクラの古木が何本もあります。
風雪に耐えてきた味わい深い風情です。
空模様が怪しくなってきたので早めに山稜線歩道に下りて何とか降られずに戻ってきました。
ミツバコンロウソウ: 今年は花の時期を逃してしまいましたが、実になり始めていますね。
アブラナ科の植物らしい細長い鞘を付けています。
トウゴクサバノオ: サバの尾のような実がついています。
この時期になるとやっとこの名の意味が分かります。
ヤマクワガタソウ: たいていは白か薄紫で花弁に薄い紫の筋が入るのが普通だと思い、そんなヤマクワガタソウばかりを見てきましたが、ここの花は筋が入らず真っ白です。
5月10日(火) アシタカツツジ
アシタカツツジを見に行きましょうとお誘いをいただき、池の平から位牌岳に伸びる尾根道を歩いてきました。
アシタカツツジは静岡のみに自生するフォッサマグナ要素の植物で、とりわけその名のとおり愛鷹山系に多く自生しているツツジです。
私は初めて。楽しみにしていました。
同じような色合いのトウゴクミツバツツジも花の盛りを迎えていました。
トウゴクミツバツツジは葉が3枚、アシタカツツジは5枚です。
見慣れてくると花の色もアシタカツツジの方が若干濃く、花の大きさも小さいようですので、だんだん見分けがついてきました。
梅雨前のこの時期にしては珍しく一日中富士山もくっきり。
薄紫のツツジの群落に挟まれた登山道は最高でした。
フモトスミレか?: 葉の変異が多く、このようにきれいな斑入りの葉はコミヤマスミレに多いのですが、花が終わっていて見分けが難しい。
日当たりの良いところに多く見られたのでフモトスミレでしょうか。
ネバリノギランか?:こちらも花期はまだで同定難し。
ヒメハギ:草地に這うように生育して、花が咲かないとまず気づくことはありません。
その花もものすごく小さくて目立たないのですが、よく見ると鳥が飛んでいるような姿。
大好きな花の一つです。
5月6日(金)
初夏の植物観察・熱海編
連休の谷間、今年は3年ぶりに規制がかかっていないので各地多くの人出だったようです。
私はのんびり植物観察、誰にも出会うことなく野山の植物観察ができました。
色とりどりのモザイクは姫の沢公園のツツジ園です。
沢沿いの道には湿った場所を好む植物たち。
ヘビイチゴ
タニギキョウ
ヤマクワガタソウ: ここで出会うのは初めてです。
何度同じ道を歩いても、季節季節、その時々の花にいつも驚かされます。
ホウチャクソウ: 身近でよく見かけますが、花弁の先が緑色で可愛らしい。
寺院の宝塔の角の四隅に吊り下がっている風鈴型の飾りをホウチャク(宝鐸)といって、よく似ていることから付けられた名前だそうな。
最終盤のスミレはコミヤマスミレにヒメミヤマスミレ。
すでに花はなくなったヒカゲスミレ。
野焼きされていた草原はすっかり緑が蘇っていました。
まさかのコキンバイザサ。
初めて出会ったのは7月、その翌年は9月。てっきり夏から秋にかけての花と思い込んでいましたが、どうやらこの時期から咲くようで数も随分とありました。花弁は6枚。
外側の外花被片の先端に立ち上がる軟毛が何ともチャーミング。
写真は上から撮っているのでわかりませんが裏返してみると、この軟毛は結構長くて外花被片の背面にびっしり付いています。
絶滅が心配されています。 山野草として販売されているようで盗掘が心配です。
その場所に生きていることには理由があります。拉致していっても育ちません。
それが分かる人ばかりであれば・・・・とため息一つ。
ワラビもそろそろ終わる頃。
それでも歩き歩きポツポツ摘んで、今晩の一皿くらいにはなりそうです。
4月22日(日) 八丁池
朝には雨も上がっていることと思い、新緑とマメザクラを見に友人とやって来ました。
昨夜相当に降ったとはいえ、これまで一度も水の流れを見たことのなかった本谷川の源頭部まで水が流れていました。
こうして雨は山を削りながら、小さな沢の流れは大きな川へとなっていくんだというお手本を見ているような光景でした。
前回訪れたのは10日ほど前でしたか。 その時は1000mを越えたあたりはまだ蕾でしたが、今日は満開のマメザクラです。
華やかではないものも山の女神のように密やかで美しいサクラです。
八丁池の展望台に登ってみました。
昨夜の雨に空気も澄んで、海と空の狭間に伊豆七島が一直線に並びます。
ブナも若葉を開き始め、とりどりの緑のベール森は一番美しい季節を迎えています。
前回はまだ咲いていなかったヤシャビシャクの花も満開でした。
友人はヤシャビシャクの花を見るのは初めて。
二人で木の下に寝そべって、「天の梅」を楽しみました。
私も3~4度でしょうか。なかなか巡り合えない花です。
番外: アカダニ何とも鮮やか。
よく見ると何だか逞しい。 赤いソラマメみたいですね。
どっちが頭かな?
4月18日(月)
春の植物観察・函南編
このところ春の長雨、なかなか山歩きも思うに任せません。
こうなったら多少降っても行くぞ!という友人の気合に圧され植物観察に出かけて来ました。
鏡のような紫水池、アワアワと枝先の新緑を映してきれいです。
ニリンソウ: 歩道沿いに見渡す限りニリンソウの帯が続きます。
ここのニリンソウは少々小ぶり、裏側がほんのり赤味を帯びていて可愛らしい。
ヤマルリソウ: 瑠璃色の愛らしい花です。
ハシリドコロ: いつもより時期が遅かったのですが、草丈も伸び花もまだたくさん咲いています。
下向きに咲く釣鐘型の黒紫色の花の中をちょっと覗いてみると、意外にも黄色。
三大毒草の一つ、要注意。
スミレ7種。
一年経つとほとんど忘れかけていて、復習です。
マルバスミレ: ふっくりとした白い花。
唇弁の紫色の筋はごく少なく、葉の形は心形。葉や茎に毛が多い。
ヒメミヤマスミレ: フモトスミレと迷うところ。
明るいところを好むフモトスミレ、照葉樹林帯の少し暗いところを好むヒメミヤマスミレ。普通葉裏が紫を帯びるフモトスミレ。 一方のヒメミヤマスミレは緑。 葉型は卵型のフモトスミレに対し、むしろ三角に近いヒメミヤマスミレ。
なかなか微妙な差で難しいのですが、私はヒメミヤマスミレと見ました。
エイザンスミレ: 独特な葉。これは間違えません。
シコクスミレ: 今日はシコクスミレが随分あちこちで咲いていました。
端正な形の葉、葉脈が少し窪み、割と見分けやすいスミレです。
ナガバノスミレサイシン: 早い時期のスミレなので、標高の高いところで少し咲き残っていました。
コミヤマスミレ: これもフモトスミレに似ているものの、萼片が有毛で後ろに反り返るのが一つの見分けポイント。
春も闌けてきて、そろそろ初夏の花も咲き始める心地よい季節になりました。
4月12日(火)
八丁池
標高1000m辺りまではヤマザクラもマメザクラも満開です。
1100mまで来るとマメザクラの蕾がやっと見え始めたばかりで、満開になるのはやはり4月も終わる頃でしょうか。
空を見上げると、ツンツンとした冬枯れの森のシルエットとは違って、枝先は丸くパンパンに膨らんだブナの新芽が青空に透けて見えます。
美しい季節がやって来ます。
一方の世界の彼方では陰惨な侵略が続いており、こんな穏やかな自然の中を歩いていても、心の奥底にズシリと重苦しい思いが拭えません。 これまでにも世界各地で様々な紛争がありましたが、今回は何だかこれまでと違う感じがしてなりません。
遠い世界の出来事とは到底思えないのは私だけではないでしょう。
私はなべて楽天的であるのですが、もう人間は滅びたとしても致し方がないのではないかという一線まで来てしまったように感じています。
久しぶりの定点観察。
皆の無事を確認。
ジンバイソウ: ようやく芽を出しました。
ヤシャビシャク: 花はまだですが、若葉をたくさん出して元気そうです。
アオフタバラン:3か所とも無事な芽出しを確認。
こちらも久しぶりの白砂天井の大アブラチャンです。
他ではすでに花が咲いていましたが、まだまだのようです。
よく見かけるヒノキ科の植物にはヒノキ、サワラ、ネズコ、アスナロがあります。友人から見分け方を教わりました。裏返すと白い気孔帯があります。Y字型がヒノキ(卑猥のY)、H字型のサワラ(触らないでH)と覚えるのだそうな。 なるほど覚えやすい。 ネズコは地域的に成育域ではないので伊豆では見かけません。
アスナロの気孔帯はYでもHでもなく、写真のとおりです。
植物の見分け方は難しくて面白い。
こちらネコノメソウの仲間2種。 葉の形、付き方、色、雄しべの数や長さ。
チェックポイントは多々あり、面白くて難しい。
4月6日(水) 伊東アルプス
つい数日前まで真冬の寒さで4月1日には雪までチラついたというのに、一気に春になりました。
週末までもちそうもない様子だったので今年も桜尾根にやって来ました。
奥野ダムのほとりから出発。
さほどの標高がないにもかかわらずこの尾根道は小さいながら急なアップダウンの繰り返しでしんどい山道です。
鹿路庭峠と冷川の分岐まで来ると桜尾根が始まります。今年も見事です。
ほとんど歩く人のいないこの尾根道は、年々荒れる一方で、どんどん尾根も削げ落ちて、桜も根元から持っていかれてしまったようなところがたくさんあります。
倒れた桜が折り重なるように道をふさぎなかなか難儀な道ですが、この桜の尾根の光景はどうしても見に来たくなってしまいます。
間の山まで来ると矢筈山の麓までうねりながら続く桜の道が遠望できます。
散り来る桜の花びらの果てしのなさ。
とりわけ今日のように一人で桜の下を歩くと恐ろしいくらいに静かです。
ここに来るといつも坂口安吾の「桜の森の満開の下」を思い出します。
今日は間の山で引き返し奥野ダムのほとりまで戻ってきました。
春爛漫とはこのこと。 桜尾根とはまた違った華やいだ桜の光景です。
本日のスミレ
フモトスミレ: 小ぶりで可愛らしい
ナガハシスミレ: 後ろに突き出した距がひと際長いので見分けやすいスミレです。
花弁は風に向かって後ろに吹き流されたように反っているのも特徴の一つ。
スミレ: バラという名のバラはないし、サクラという名のサクラもありませんが、スミレという名のスミレはあります。
3月25日(金) 春の植物観察
満開のサクラです。熱海は12月から様々なサクラが咲き継ぎますし、サクラは実に多種多様。
種類は分かりませんが、ソメイヨシノではありません。
私はヤマザクラや純白のオオシマザクラが好きです。もうすぐそんな時期がやって来ます。
今年もスミレの季節が巡ってきました。 一年経つとようやく覚えたスミレの種類もすっかり頭の中から消えています。 今年もやり直し。
まずは最もポピュラーなタチツボスミレです。 まだまだ時期としては早く、他の種類は見つかりません。
草原は珍しく山焼きがされていました。 草原はいかにも自然豊かに感じるところですが、人の人工的な関与があってこそ植物も命を繋いでいます。
草原に手を加えなくなるといずれ森に変化していき、草原の多様な植生も失われていってしまいます。
ここには伊豆の固有種も多く、秋どのようになるか楽しみです。
早くもクサボケが焼けたススキの間を這うように花を付けています。
逞しいですね。
ヤマネコノメソウ: 大群落でした。
ネコノメソウの仲間は春も浅い時期から花が咲くものが多くあります。
ネコノメソウの仲間も多種多様で見分けはなかなか難しい。
その中でも葉が互生のものは少なくヤマネコノメソウとタチネコノメソウくらいですので、これは間違えません。
ヒメオドリコソウ: ホトケノザとよく似ています。
セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ。 春の七草はすっかり身近で見かけることが少なくなってしまいました。
もっとも七草の一つホトケノザはヒメオドリコソウとよく似た今のホトケノザではなく、タビラコのことのようです。
3月19日(土) 伊豆二山
伊豆の国市に連なる太古の海底火山の名残り、城山、葛城山、発端丈山は伊豆三山と呼ばれています。
このところは人の多い葛城山をスルーしてもっばら伊豆二山です。
久しぶりに3人で登ってきました。
すっかり暖かくなって一面白いベールがかかったように霞んでいます。 肉眼では辛うじて富士山は見えていますが、写真ではちょっと無理でしょうか。
発端丈山からもやはり同じ。すぐ真下の駿河湾でさえ境目が霞むほどです。
ポカポカの春の日差しを背に受けながら山頂で食べるお昼は格別。
帰り際に見上げた城山の南壁です。米粒ほどのクライマーが元気に掛け合う声が響きます。
そうそう、私たちと同じコースを高速で走るトレイルランの練習中の若い女性に2度行き会いました。
何となく先日八丁池で行き会った女性によく似ていたので、尋ねてみたところ彼女も私たちを覚えていました。
またどこかの山で会いましょうねと別れました。
ヤブサンザシ: 花を見たのは初めてです。
同じスグリ科のヤシャビシャクと小さいながらよく似ています。雌花のようです。
3月9日(水) 八丁池
本谷川の水が地中に潜るあたりまで来ると、急に山肌に雪が残るようになりました。
踏み跡がないので、おそらくは昨晩降ったのでしょう。
展望台に登ってみると、向かい側の青スズ台の山肌は白くなっていますし、万三郎岳にも雪が付いています。
ようやく春めいてきたと思っていましたが、山の上はまだまだ春も浅いようです。
それでも2月に来た時には全面氷結していた八丁池に氷は欠片もなく、3月になったんだなと感じます。
あわよくば、もう一度氷の上を歩きたいと思ってきましたが、残念、残念、また来年です。
定点観察中の植物たちもまだ落ち葉の下。
大ブナのヤシャビシャクの芽はふっくりしてきていましたが、この時期はどこにいるのやら判りませんね。
カメラマンの腕の問題だけではなさそうです。上手に身を隠しつつ生きています。
林間ではようやくミツマタの花が咲き始めていました。
うつ向いてもういいかと辺りを窺いながら一番に咲く春を告げる花です。
2月4日(金) 八丁池
今日は立春。 日の出は早くなり、夕暮れは遅くなり、少しずつ春に向かっているのが感じられるようになってきました。
とはいえずいぶんと底冷えのする日です。
久しぶりに友人と二人、白砂天井を散策してみました。何度も何度も歩いてはいますが、まだまだ歩いていないところがたくさんあります。
天城の中でも一番ではないかと思われるような大ブナに行き会いました。
手引頭のブナは天城一と言われていますが、こちらの方が大きいような感じでした。
幹回りは比べてみないと判りませんが、樹高はこちらの方が圧倒的に高いと思います。 隣に立つ友人と比べると大きさが分かります。
いつだったか出会った大杉にも久しぶりに再会しました。 森は奥深いですね。
今日の八丁池です。
陽の当たる水際を除きほぼ全面凍結。
本日のメインイベント、氷上を歩いてみました。
二人で初めはへっぴり腰でこわごわ。
しかし、びくともしないのが分かって少しずつ大胆に。
東側から西側の岸まで歩けました。
北側の水際には水神様の像があるのはよく知られていますが、反対側の水際には弁才天様がおられるということを、先日会った方に聞きました。
こちらは石彫でした。
うまく写真が撮れなくて残念です。
池が凍らなければ見ることのできない弁才天様です。
自然に凍った池の上を歩いたのは生まれて初めて。
いくつになっても初めてって楽しいもの。