不思議な空間です。
マメザクラやオシダ、スズタケに覆われた伊豆の秘境中の秘境、原生の森だったと、30年前のカワゴ平を知る人は言いますが、今やすっかり鹿に食べられてしまって現在のように下草もなくなり、転がる噴石はすっかり苔生しています。
火口の一部は保護のための柵で囲われているものの、鹿の食べないアセビばかりが目立ちます。
カワゴ平に限らず、天城の山々の見事なブナやヒメシャラの森の山肌は、ほんの数十年前まではスズタケに覆われて、落ちた実から芽吹いた幼木はその丈高い下草に守られて成長したのでしょう。
今や根はむき出し、スズタケも幼芽も鹿に食べつくされてしまっています。
人間もむき出しの根の上を歩き、この美しい森の行く末は明るくありません。
鹿の食害は深刻で悪者扱いですが、鹿がどんどん増えてアセビばかりになってしまえば、食べ物がなくなり、やがて鹿もいなくなるのでしょう。
そうして鹿がいなくなって坊主のようになった山々にまた植物は戻ってくるのかもしれません。
あるいは、3200年前のカワゴ平火山の大噴火のように何らかの天変地異が起きて、長らく続く不毛の大地に新たな開拓者の植物が根を下ろし始めるのかもしれませんね。
人間の仕業の影響は大ですが、人間も自然の一部。
長い長い自然の営みの中のほんの一瞬を私たちは嘆いているに過ぎないのかもしれません。
そんなこんな、久しぶりに真面目に思い巡らせながら、火口を一人ゆっくりと歩きました。
白砂天井・・・地図読み練習で下りたことはありますが、登ったのは初めてです。 今回の強敵はタラリと平坦な尾根ではなくて、この時期大発生する虫の大群でした・・・・久しぶりの人間とばかりに寄ってたかって集まって来るので、参りました。
ハッカ油スプレーも効かず、タオルを休みなくブンブン振り回しながら歩いてもウワ~~~ッとやって来る。
美しい林を見る間も、草花を愛でる間も、コンパスを見る間も与えてくれないのです。
虫に負けて、帰路は下り御幸歩道を採りました。
不思議と歩道には虫の大群はゼロ。
天城で見かけるのは圧倒的にヒメシャラですが、カワゴ平はヒコサンヒメシャラばかりです。
木肌を見ると違いがよく分かります。
花もヒコサンヒメシャラの方が早く、花びらの一枚がポッと紅を差したように赤くなります。
今回は初めて南側の水生地から白砂天井を直登してカワゴ平まで歩きました。 往復20㎞。
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6月15日(木) 自主練・天城峠から三蓋山
梅雨なのにパッタリ雨が降りません。これ幸い、地図読み尾根歩きの自主練に行ってみました。
天城峠から始まる伊豆山稜線歩道。
①天城峠~二本杉峠までは登山道の南側の尾根を辿り、
②二本杉峠から三蓋山までは登山道。帰路はその逆で、
③三蓋山から二本杉峠までは北側の尾根を辿り、
④二本杉峠から天城峠までは登山道を歩きます。
地形図を眺めると、きれいに尾根が続いていて見ているだけで楽しくなります。
しかしながら地図読み初心者のワタクシ。
教わった通り、真面目に地図とコンパスとにらめっこしつつ、時にはGPSの助けもかりて尾根を辿ります。
何度か変針する地点も慎重に、慎重に。
人間の感覚はあてにならないもので、コンパスの指す方向とずれることがあります。そんな時はさらに慎重に見直してみますと、コンパスが正しいのですね。
先生の言ったとおりです。 時々誰かの歩いた痕跡の目印のテープを見つけるとホッとします。
898ピークのの昔の道しるべまで来ました。
ここから変針して二本杉峠まではもうすぐのはず。
無事二本杉峠到着。お腹も空いてきたので、三蓋山まで歩いてのんびり昼食。
帰路、滑沢峠から尾根に登ってみます。
細尾根が少し、あとは広くて気持ちの良い尾根が続きましたが、二本杉峠の手前で登山道に合流するところに小さな尾根が結構あって、何度か行きつ戻りつ、ウロウロしました。
下りてみたら、もう少し先まで尾根を辿れば、なだらかに合流できたようです。
二本杉峠からは登山道を天城峠まで戻りました。
山稜線歩道は何度か歩いたことのある道です。
尾根をを避けて作られているので、比較的アップダウンが少ないのですが、斜面に作られているわけで、特に北側の沢沿いは崩落箇所が何か所かありました。
ところが、尾根をたどるとアップダウンはあるものの斜面の歩道の危険はありません。
そんな恐らく当たり前のことが尾根歩きをしてみるとよく解ります。
おまけにマメザクラやブナ、ヒメシャラ、アブラチャンの林は本当に気持ちよく歩くことができます。
本日の自主練は無事終了。
まだまだ、まだまだ、経験不足です。
それでも楽しかった!
今度はどこに行こうか・・・
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6月9日(金) 愛鷹
伊豆から富士山を見ると、手前にドッカリとした山塊があります。
「富士山のジャマ!」と時に邪険に扱われる愛鷹山塊です。
富士山がちょうど噴火を始める頃に活動を終えたとみられるずっと先輩の大きな火山で、あとから頭を出した若輩者が超有名になってしまったというのが本当のところです。
長い歳月を経て崩壊が進み、越前岳、位牌岳、前岳、呼子岳、鋸岳、大岳、袴腰岳、愛鷹山、黒岳という頂を残して今の姿になっています。
今日は水神社から位牌岳、袴腰岳、愛鷹山を経て水神社へと戻るコース。
愛鷹水神社: 桃沢川の水源に龍神様を祀っています。
まずは安全を祈って参拝。
流れる水は空気のように透明で滔々と流れています。
水神社~つるべ落としの滝:桃沢川の沢沿いを源流部に向かって登って行きます。至る所古い火山の名残り。
板状節理や千じょう岩、登山道は崩落した岩でゴロゴロです。
華やかさはないものの、白いガクウツギの群落が両側から覆い被さるように群れ咲いて涼やかです。
つるべ落としの滝:幻の滝とも言われているそうです。
あいにく滝壺に水はなく、垂直な断崖をわずかに水が流れていました。
つるべ落としの滝~位牌岳:ともかくきつい登り。
森は緑一色で、ブナの巨木が靄って幻想的でした。
今日の最高峰、位牌岳は1457m。 お昼を食べて元気回復、愛鷹山を目指して、尾根歩きです。
愛鷹山までほぼ平らな稜線です。
時折靄が晴れて、相模灘と海岸線、ギザギザの鋸岳が見えたりもしたものの、歩く両側はストンと落ちています。
底が見えないのでむしろ怖く、今も崩壊し続けている愛鷹の山を実感する尾根歩きでした。
本日はなかなかの悪路。
3人そろって結構転び、泥だらけながら無事、水神社へと下山しました。
5月29日(月) 富士山五合目須走口
標高2000m。ここから見る富士山はなだらかで、頂上は手が届きそうですが、あと1700mもあります。
五合目山小屋を中心に北側の小富士。
その反対、南側の幻の滝を散策しました。
小富士 :
カラマツやダケカンバ、コメツガ、ミヤマハンノキなどの樹々の間を抜けて15分も歩けば小富士。
いくつもある富士山の側火山の一つです。
残念ながら靄っていて下界は見えませんでしたが、時折スウッと晴れて富士山山頂がのぞきます。
幻の滝 :
富士山の雪解け水がちょうどこの時期にだけ滝となって流れ、雪が少ないと全く現れない年もあるというので「幻の滝」。
私たちとすれ違うように戻ってこられた人達は口々に「全くダメ。 全然流れてない。」
それでもせっかくなので、おにぎりでも食べながら待とうと行ってみると、なんと水音が聞こえてきます!
まさに流れ始めた水の先端が目の前にやってくる瞬間に行き会いました。
水量はさほど多くはありませんでしたが、何度も来ているのに一度も遭遇したことがないという人がいる中で、私たちは何と幸運なこと。
富士山グランドキャニオン
五合目から旧馬返しまで下ります。
何万年にもわたって堆積した富士山の噴火による堆積層を雪代(ゆきしろ)が侵食した断面が見られます。
「雪代」というのは、雪が雨に変わる標高およそ2300~2500mあたりで発生した雪と雨の混じった雪崩が、流れ落ちるにしたがって山の土砂や岩を巻き込みながら土石流になって流れ落ちる現象を指す富士山独自の呼び名です。
高い所では70mほどあり、
チョコレートケーキのような美しい堆積層は美しく、同時にいつでも崩れそうで恐ろしく、時に甚大な被害を及ぼしてきたこの富士山の巨大な自然の力を「雪代」という美しい名前で呼んだ麓の人たちの気持ちをふと考えました。
荒々しさも美しさも不思議さも 富士山はやっぱり桁違いでした。
頂上は無理でも、今年は麓をたくさん歩きますよ!
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5月23日(火) 長九郎山
アクセス地点までが遠くてなかなか行けなかった長九郎山。
アマギシャクナゲで名高い山でもあります。
山頂に近づくにつれて、徐々にアマギシャクナゲが増えてきました。
標高の低い所はすでに盛りを過ぎていますが、頂上付近は満開です。
頂上には鉄塔が建っており、標高995mの長九郎も登れば1000mになります。
ここからは富士山、南アルプス、御前崎、駿河灘に相模灘、箱根、天城の山々、須崎半島、伊豆七島、三筋山の風車、石廊崎・・・
足元にはアマギシャクナゲの群落が連なって、360度全方位、伊豆半島随一の眺望です。
晴天。
このところずっとついています。景色もなお一層の素晴らしさです。
富貴野山宝蔵院の石仏群:苔生した参道には、やはり苔生した石仏様たち120体が静かに並びます。
大沢温泉: 帰路立ち寄った川沿いの温泉。
伊豆では唯一の炭酸泉という。
舐めてみたら少し塩味がしました。
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5月20日(土) 函南原生林
全国的に夏日の予報が出ている一日、緑の天蓋の下の原生林は快適でした。
南伊豆の植物好きの友人3人がはるばるやってまいりました。
同じ伊豆でも南と北では植生も違うようで、珍しい植物だらけとのこと、皆かがみこんでは動かず、記録的スローペースです。
サンショウバラ : 原生林手前の農道脇の大株は見事に満開でした。
サンショウバラはフォッサマグナ要素の植物で地域的にも限定的な美しいバラです。
今年も見られて嬉しい限りです。
虫はアオハムシダマシ
ジロボウエンゴサクの作戦 : 小さなサヤのような実になっていました。
触るとこれは驚き!
スカートが捲れ上がるようにクルリと巻き上がると同時に種を勢いよくはじき出すのです。
面白くて皆で触り、顔中種だらけになった人もあり。
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天城の森の尾根歩き
5月19日(金)
文句なしの五月晴れの朝。
エイヤッとやって来ました水生地。
天城峠から青スズ台、八丁池までを尾根伝いに歩く初心者地図読み自習コース。
すぐ前に団体さんが歩いていて、最後尾の方とお話しながら一緒に歩き、天城峠で別れを告げ、私は尾根をよじ登りまして・・・
まあ、まあ、間違いなく取り付きには成功。
ブナやヒメシャラの森の尾根は気持ちよく、登山道とほぼ並行しているので、時折下の方から先ほどの団体さんの声がします。
無事青スズ台到着。
腹ごしらえをして八丁池の東側から北側の尾根伝いにぐるりと回って白砂天井の方に降りることにしました。
八丁池の北側もなだらかな天井が広がり、ブナの巨木が見事です。
家に帰って歩いたログデータを見てひとり反省会。
歩いた軌跡、間違えたところ、どうして間違えたかよくわかります。 私が歩くのを空からチェックしているGPSはすごいけれど、怖い気もします。
・・この地に眠る・・
愛新覚羅溥儀の姪にあたる彗星が日本人男性と心中した地は天城山中の向井峠近く・・・とどこかで読んだことがありましたが、向井峠から尾根筋に入って間もなくのところに小さなプレートがありました。
偶然に行き当たりましたが、歳月を経て、静かなブナの森の落ち葉の散り敷いた明るい所でした。
手を合わせて通り過ぎました。
・・青スズ台付近・・
足元にはマメザクラの花びら。
ようやくトウゴクミツバツツジが咲き始めたところです。
ギンリョウソウ : ブナの森には付き物です。
キノコのようにも見えるので秋のイメージですが、意外にも春先から秋までよく見られます。
幼葉たち : 手の平におさまるほどの中にたくさんの顔ぶれ。 タニギキョウ、モミジガサ、ツルアジサイ、セントウソウ、ウワバミソウ
・・河鹿の湯・・
天城を歩いた後はたいてい湯ヶ島の「河鹿の湯」に立ち寄ります。
川の対岸が源泉のいい湯です。
私の一番のお気に入りの共同浴場です。
5月11日(木) 地図読み 猿山〜小僧山
伊豆の山々の奥のさらに奥、猿山と小僧山。
登山道なし。
地図にコンパス、何より心強い地図読みのM師匠が同行。
涸沢歩道 : 猿山の南東尾根に取り付くまで沢沿いを登ります。
途中、卵発見。 無傷!
たまたまゆで卵を持ってきていたので、リュックから落っことしたと思ったほど。
小振りのニワトリの卵くらい。ヤマバトの卵でしょうか。
猿山の大杉 : 猿山の南東尾根中腹にあります。
山深い所にあるので、あまり知られていないようです。 猿山の入り口の守り主のよう。
落葉期の照葉樹の葉が急な登りに散り敷いて、滑るわ、滑るわ。
登り切ると頂上付近はなだらかなブナやアセビの森が広がっています。
厳しい環境の中で倒れてしまったのがむしろ良かったのか、そのまま成長を続けてまるでダイオウイカのような姿で大ヤマグルマが堂々と横たわっています。
猿山〜小僧山 : しばらくは練習で先頭を歩かせてもらいました。
この付近は支尾根がたくさんあって地図読み練習にもってこいの場所との由。、、
まんまと間違え、M先生のダメ出しあり。
アマギシャクナゲが咲き始め、小僧山に近づくにつれてトウゴクミツバツツジも目立ち始めました。
あと10日もすればさぞ見事な満開の尾根になることでしょう。
三蓋山手前の南側には、なだらかな斜面が広がっていて、ここでお昼。
M先生の作って下さったお味噌汁はものすごく美味しくて、ひたすらガツガツ。
写真を撮り忘れました。
三蓋山から914尾根は方向の見極めが難しい広い尾根。
急な斜面をひたすら下ります。
アマギマダラのサナギ。
初めて見ました、不思議なサナギ。
目のように、キラリと光る斑点あり。
急な登りあり、急な下りあり。
山は深く、新緑は瑞々しく、これからもこの美しい森が守られますように。
来年は満開のシャクナゲの下を歩けるといいなあ・・・と気の早い話。
それともまた来週あたり、行ってみようか・・・・とウズウズ。
5月2日(火) 地図読み・八丁池
八丁池を巡る歩道は幾本もあり、コースを変えながら何度も楽しんで歩いてきました。
さて、本日はこれまでとは違いまして、習いたての地図読み練習です。
歩きなれた歩道ではなく、地図とコンパスを見ながらの尾根歩きに挑戦です。
いつも一番ハードルが高いのが最初の尾根を見極めて間違いなく取り付けるかどうかです。
沢沿いにしばらく登り、現在地を確認して登ってみます。
尾根は下から見上げると小山のように見えます。 何とか目当ての尾根を見つけました。
地図とコンパス、目の前の尾根、周りの地形を見ながら登っていきます。
尾根は正直。
地形図通りに続いていき、最初のチェックポイントの本谷歩道に突き当たり、まずはホッと一息。
その先八丁池へも尾根伝いに登って行きますが、いつも歩く歩道では出会えないブナやヒメシャラ、モミの林は見事です。
見頃を迎えたマメザクラがあられをまき散らしたように林間に広がって、気持ちの良い尾根歩きが続きます。
途中から左手に見え隠れしながら富士山が付いてきます。
八丁池に近づいてくると、伊豆七島や三筋山の風車も見えてきます。
かなりの急斜面なのにあまり苦にならずに登って行けるのは、この美しい森と景色のおかげでしょう。
八丁池のほとりでお昼を食べれば元気回復。
欲が出まして、帰路も尾根伝いに白砂天井を下りました。
「天井」の名のごとく、広く開けたなだらかな斜面が広がっていますが、広い尾根はどこが尾根かはっきりせず、特に下りは難しいですね。
小山のように見える細尾根の方がずっと分かりやすいのです。
それでも、方向さえ間違えなければ必ず目指す地点に着けるのですね。
白砂天井はむしろ「天上」と呼びたいほど。
ブナやヒメシャラ、リョウブ、スギの大木が見事です。
本日の地図読み練習は無事終了。 M先生に結果報告して合格点をもらい良い気分。
これまで、時には目印につけられたテープを追いながら登山道を歩いていましたが、地図とコンパスで歩くと、テープを追うのではなく、自分の位置を意識しながら不安なく山歩きが出来ると感じたのは大きな発見です。
とにかく面白い!