●●● 11月の染料植物 ●●●
アラカシ (粗樫) 2017年
日本の色彩感覚はつくづくゆかしく、橡色(つるばみいろ)もその一つです。
いわゆるドングリで染めた色の事を指します。
ドングリを付ける木には多くの種類があります。
アラカシ、シラカシ、ウラジロガシなどの常緑樹、コナラ、クヌギ、クリなどの落葉樹。 植物の違い、使用する部位によって幅広い色相を染めます。
いずれもタンニンを多く含むので、染めは堅牢で古くから使われてきました。
自宅付近に多いのはコナラ、アラカシ、アカガシ、シラカシ等で、中でもアラカシは12月近くになっても実を残しています。 実も葉も枝も、すべて染めに利用できます。
秋が深くなった静かな夜更け、降り積もった落ち葉にポツリ・・・ポツリ・・・とドングリの落ちる音に耳を澄ませば、心も深と静まります。
●●● 11月の染料植物 ●●● 2016年
シャリンバイ(車輪梅)
町中の植え込みや劣悪環境の道路の中央分離帯に植えられているのをよく見かけます。
かなり強い植物のようです。
伊豆の東海岸を歩くと、岩にへばりつくように自生していて、
本来の生息地のシャリンバイはのびのび、ツヤツヤと美しくこんなにもたわわに実を付けます。
奄美大島では黒染めの染料として有名でテーチキと言っています。
材を使うようですが、こちらではそんな訳にはいきませんので、枝葉や実を使います。
私は実で染めるのが好きで、枝葉より紫味のある色が染まります。
また、実を見つけたら冷凍しておいて使えるので便利です。
●●● 11月の染料植物 ●●● 2015年
ヤマハゼ(山櫨)
草木染めに使う植物は、基本的には採集したばかりの新鮮なものを使います。
野菜も魚も同じですね。 新鮮なものは美味しいです。
染料の中でも乾燥しないと染まらないものや、ドングリやヤシャブシの実、タマネギの皮など 乾燥して保存ができるものも少数ながらあります。
ヤマハゼは紅葉した葉を拾い集めて使いますが、おそらく緑葉のうちではかぶれるからだと思います。
乾燥して保存もできます。
ウルシ科のヤマウルシ、ヌルデも同様に紅葉してから使います。
付近には、ヤマハゼやヌルデがたくさん自生していて、紅葉を楽しみ、集めては染めて楽しみ、二度おいしい植物です。
ヤマハゼで染めた着物が紬織着物「ノクターン」です。